GRA の「企画ノート」です

NPO法人GRAが、企画案や作成中の文章などを公開し、広く意見や提案も募集するページです

Q&A タイヤの空気圧について


この文章案について、色々とご意見やご指摘を下さり、ありがとうございました。
お蔭様で、文章内容を分かりやすく、且つ 情報多くまとめ上げる事が出来ました。

2019年10月11日 23:40  意見募集を終了しました




以下の文章は、正式に回答・掲載する前の、内容の確認や校正段階の文章です。
ご覧になった方で、ご指摘やご意見があれば、是非、お寄せください。

                                          2019年10月 5日    13:30 投稿

 

      ***********以下、校正前検討中文章 ************

Q&A   タイヤの空気圧の調整は


【 質問 】

タイヤの空気圧についての質問です。
今は、メーカー指定の空気圧に合わせていますが、ネットでは雨の日は少し下げた方が良いとか、高めが良いとか出ています。
また、サーキットなど高速走行する時には低目にするとか書いてあります。
実際にはどうでしょうか。おすすめはありますか。

 


【 回答 】

タイヤの空気圧について、質問をくださり、ありがとうございます。
確かに、タイヤの空気圧については諸説色々と書かれていますので、迷う人は少なくないでしょう。

では、あなたへお勧めする、一番の方法から案内します。
1. あなた専用のエアゲージ( マイゲージ )を準備します
2. 車両メーカーの推奨値などを目安にして、前後タイヤの空気圧の【 基本設定値 】を決めます
3. 乗る度に、冷間時(走行する前)に、【 基本設定値 】に調整します

<お勧めの理由>
・・ 質問の内容から、空気圧を 10~20 kPa (0.1~0.2 Kgf/? )のレベルで調整を考えていると受け止めました。仮にそうであれば、条件を整えて調整する必要があるので、上記の内容を回答しました。
・・ エアゲージでの測定結果には必ずゲージ毎に個体差があります。まして、不特定多数が使用して故障や経年劣化が不明なゲージ、例えばスタンドや販売店などのエアゲージでは正しい』調整は不可能です。
・・ 毎回、冷間時の調整を進める理由は、外気温が大きく変化した時や、走行した後(温間時)での測定では、20~30 kPa 程度の変化があるからで、正確な調整には測定条件を揃える必要があるからです。
・・ タイヤには、オートバイとライダーとの間でバランス良く性能が発揮できる[最適空気圧]がありますが、それに近づく為には、エアゲージなどの測定条件や暫定の【 基本設定値 】を守る事が第一歩だからです。


         *    *    *  以上が「簡潔編」、以下は「基本と応用編」です  *    *    *    *


『 タイヤのメカニズム 』

ご存知の通り、タイヤは路面をグリップして、オートバイとライダーの荷重を支えるだけでなく、走ったり、曲がったりするなど時に欠かせない役割をこなしています。
この役割を果たす為、タイヤメーカーの技術者が苦心している事は、路面と接するゴム素材の改良と荷重を受けた際の変形の仕方です。

ゴム素材によってグリップが変わる事はスニーカーでも体験している事ですが、どんな風に路面と接するかという変形の仕方によっても性能が左右されるので、緻密な解析技術や新開発素材や技術が投入されている部分です。
そして、この変形の仕方を左右する要素の一つが「 空気圧 」ですから、タイヤの性能を正しく発揮させる為には、ゴムの賞味期限を除けば、「空気圧」の調整が大きく影響します。

ゴム素材の基本性能は高く、通常使用する路面温度( 0℃ 以上 50℃以下)であれば ほぼ安定した性能を発揮しますが、路面温度や気温の変化に伴ってタイヤ内部の「空気圧」は変化しやすく、それによってタイヤ性能も変化します。
だから、タイヤの立場になって考えれば、タイヤの表面温度や気温や降雨などの状況変化に合わせて空気圧を変更するのではなく、タイヤが最もバランス良く性能を発揮する[最適空気圧]に合わせる事が一番良い結果に近づけるのです。

 


『 メーカー推奨値について 』

車両メーカーでは、二輪、四輪を問わず、タイヤの「 空気圧 」の推奨値を明記していますが、これも車両本来の正しい性能を発揮する為には「空気圧」の調整が欠かせないからです。

ただし、車両メーカーが標準で装着しているタイヤ・標準タイヤは、殆どの場合、その車両専用のタイヤが装着されている事も理解しておく必要があります。
車両の設計段階で、車両メーカーが強調したい車両性能を伸ばし、抑えたい性能についてはカバーする為、その車両専用に開発されたタイヤを標準タイヤとして採用されています。

従って、車両メーカーが推奨する「空気圧」は、標準タイヤでメーカーが想定した性能を発揮させる為の推奨値で、標準タイヤからタイヤ交換した場合には “参考値” 程度と理解して、メーカー推奨値が絶対と考えるのは タイヤ設計上からも正しいとは言えません。
また、標準タイヤと同じタイヤメーカーで同じ銘柄( 名称やトレッドパターン )の市販タイヤに交換したとしても、多くの場合は同じタイヤとは言えません。
標準タイヤが車両専用タイヤになっている理由は、タイヤメーカーにとって、車両メーカーは大得意先様であり、発注本数が多くて生産計画も明確なので、専用タイヤの開発と納入は必然だからです。



『 冷間調整、温間調整について 』

冷間調整(通常は短く、冷間と表記します)とは、走行前でタイヤが走行熱で温まっていない状態で 空気圧の調整を行なう事で、温間調整(温間)とは、走行熱でタイヤ自体が温まった状態で空気圧調整を行なう事です。

実際にタイヤが性能を発揮するのは 温まっている時ですから、「空気圧」がタイヤの性能を左右するからには、温間調整を行なうのベストである事に誰も異論は挟めません。
が、実際には、温まっている時に空気圧調整を行なうのは一般的ではない為、冷間時の調整が広く推奨されているだけです。

また、タイヤ技術者の方々も広く “冷間” を推奨し、レース現場でのタイヤメーカーアドバイザーも “冷間” を基本としてきたため、冷間調整が最善であるかの様に捉えられてきました。
しかし、タイヤウォーマーの使用が当たり前になった現場では、レース本番で想定されるタイヤ温度(ホイールも含め)に事前に温めておき、その温度で最高の性能を発揮する「空気圧」に調整する事が求めらており、基本 “冷間” という考え方は既に過去のモノになっています。
 
従って、サーキット走行や講習系走行イベントなど、特定のエリアを走っては空気圧測定やタイヤ表面温度測定が可能な場合には、温間での空気圧調整とデータ収集が基本になります。

 


『 最適空気圧について 』

オートバイの性能を正しく安全に発揮させるには、タイヤに正しく適切に能力を発揮してもらう事が必須ですし、それがライダーにも安心感に繋がる事が欠かせません。
その為には、タイヤが最も性能を発揮する[最適空気圧]は、そのオートバイの状態(車種の他、整備やセッティングの違い)とライダーに合わせ(体重や体格、感性が違うので)によって異なる事を理化して、メーカー推奨値だけに捉われず、最適な[最適空気圧]を探し求める努力はとても大切な事です。

仮に、気温や路面温度、降雨などの路面状況に合わせた調整を加える場合があって、[最適空気圧]を基本に調整して良い結果が出たならば、その修正値を[最適空気圧]として変更する程の考えの余裕幅を持つ事も必要です。